感染症学雑誌
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3症例の淋菌性咽頭炎
小島 弘敬小倉 修二森田 豊寿村上 康弘武村 民子山井 志朗渡辺 祐子黒木 俊郎滝沢 金次郎
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1988 年 62 巻 4 号 p. 381-387

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抄録

3症例の淋菌性咽頭炎を診断治療した. いずれも淋菌性尿道炎男子のパートナーとして受動的に受診した女子で, 咽頭とともに頚管からも淋菌が分離されている. 急性咽頭炎の自覚, 他覚症状は判然としなかった. SPCM 2g 1回筋注, あるいはABPC1.5g内服7日間の, いずれも生殖器淋菌感染症に対して有効な化学療法により, 頚管の淋菌は陰性化したが咽頭の淋菌は陰性化しなかった.
咽頭からの淋菌の細菌学的検出には, グラム染色, 淋菌抗原のEIAによる検出法 (ゴノザイム) は使用できない. 咽頭検体には多種, 多数の常在菌が存在することがその理由で, このため淋菌性咽頭炎の診断は現時点では淋菌分離培養による以外に方法がない. 分離培養には淋菌撰択培地の使用が必須である.
咽頭の淋菌は生殖器淋菌感染症に対して有効な化学療法によっても陰性化しない場合があり, 急性咽頭炎としての自覚症状を呈さず治療機会を欠いて, 無症状保菌者の状態が続く場合がある. 日赤医療センターを受診した男子淋菌性尿道炎患者の5-10%が頚管ではなく, 咽頭を感染源としたものと推定される. 淋菌性咽頭炎は淋菌感染症の感染源として重要であると考えられる.

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