感染症学雑誌
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モノクローナル抗体を用いた免疫染色による緑膿菌性肺炎の病理学的研究
田代 隆良山崎 透後藤 陽一郎後藤 純重野 秀明那須 勝
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1989 年 63 巻 1 号 p. 1-9

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抄録

緑膿菌性肺炎は致死的末期肺炎であり, 近年増加している.著者らは抗緑膿菌モノクローナル抗体を用いて, ビオチン・ストレプトアビジン法により剖検肺の免疫組織染色を行い, 14例を緑膿菌性肺炎と診断した.これは全剖検例の7.6%, 細菌性肺炎の26.4%だった.全例重篤な基礎疾患を有し, 11例 (78.6%) は造血器腫瘍や固型腫瘍だった.3例は先行する感染症の治療中に菌交代症として発症していた.いずれも重症肺炎であり10例 (71.4%) では緑膿菌性肺炎が直接死因に関与していると考えられた.
免疫染色により, 緑膿菌は全例で肺胞腔内に認められ, 気管支内にも認められた.肺胞壁や血管壁侵襲も高率に認められた.これは末梢血白血球減少例で著明で, 菌は外膜から内膜に向って侵入していた.
病理組織学的にも緑膿菌性血管炎が特徴的で, hyaline necrosis, 血栓形成が認められた.ほぼ全例に著明なうつ血と肺胞内出血があり, 炎症細胞浸潤, 肺胞壁破壊, 膿瘍形成, フィブリン折出, 凝固壊死などが高率に認められた.
P.aeruginosaの血清型と組織内局在や病理組織像との間には特徴的関連は認められなかった.また, 6例 (42.9%) において真菌との混合感染が認められ, 臨床的にも留意すべきであると思われた.

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