感染症学雑誌
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マウスにおける実験的消化管カンジダ症発症および全身播種におよぼす抗生剤と抗癌剤の影響
鈴木 宏中村 明宮治 誠西村 和子
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1989 年 63 巻 1 号 p. 44-51

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抄録

Candida albicans経口投与マウスを用いて抗生剤, 副腎皮質ホルモンと抗癌剤を単独および併用投与し, 糞便中のC. albicansの菌数, 末梢白血球数および好中球数, 消化管の粘膜傷害と消化管カンジダ症の発症およびそれに続発する全身播種との関係について検討した.抗生剤は, 経口的にvancomycin, amikacin, polymyxin Bを, 筋注投与としてampicillinとgentamicinを用いた.副腎皮質ホルモンとしてはhydrocortisone (HC) を, 抗癌剤としては, 主として白血球数および好中球数の減少をもたらすcyclophosphamide (CPA) と消化管の粘膜傷害をおこしやすいmethotrexate (MTX) を使用した.
抗生剤と抗癌剤を併用投与されたマウスにおいては糞便中のC. albicansの菌数が経日的に著増するとともに前胃部と胃の境界縁を中心として消化管カンジタ症が高頻度に認められた. MTXを投与されたマウスでは腺胃部や小腸にも病変が及んでいた.臓器播腫は, 著明な白血球数減少と消化管の粘膜傷害をきたした抗生剤とMTXおよびCPA併用マウスにおいて肝臓と肺を中心として認められた.
以上の結果より, 消化管カンジダ症の発症には一定以上のC. albicansの菌数が必要であり, 臓器播種を起こすためにはこれに加えて白血球数および好中球数の減少と消化管の粘膜傷害が重要であると考えられた.

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