感染症学雑誌
Online ISSN : 1884-569X
Print ISSN : 0387-5911
ISSN-L : 0387-5911
母児間におけるB群溶血性連鎖球菌の保菌状態の検討
宮沢 広文若井 智世土志田 健山本 優美子太田 美智男
著者情報
ジャーナル フリー

1992 年 66 巻 10 号 p. 1416-1421

詳細
抄録

B群溶血性連鎖球菌は母児にたいして病原性を持つことが知られている.その病原性のひとつに妊婦産道の細菌叢との関係が言われている.そこで妊婦の膣培養でGBSが検出された242例において, その経過を観察して母児の保菌状態を検討し次の結果を得た.
(1) 母児に出現するGBSは血清型ではIa型, III型, NT6型, JM9型が多く認められた. (2) 分娩から児の発達を通じて単独の型のみが検討された166例中60例に母から児への同じ菌型の移行がみられた.この保菌状態はIa, NT6, JM9に長い間の保菌状態を認め, Ib型, II型, III型は保菌状態が短いという傾向をしめした. (3) 型別血中GBS抗体価の検討では, 母標数の多かったIa型, III型については有意ではないが抗体価が高いと, 母から早く消退する傾向があり, 児においても分娩時に母児間の移行が少ないという傾向をしめした.
以上母児感染のGBSの型はIa型, III型ばかりでなくNT6型, JM9型の割合が多くなっている傾向にあり, 母の抗体価の児への移行は母児間の感染防御に何らかの役割をはたしているかと思われた.

著者関連情報
© 日本感染症学会
前の記事 次の記事
feedback
Top