感染症学雑誌
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上水道が原因と推測されたSalmonella Enteritidisの集団食中毒
村松 紘一西澤 修一
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1992 年 66 巻 6 号 p. 754-760

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抄録

1989年9月に長野県高遠町において, 町営水道が原因と推測されたサルモネラ食中毒が発生した. 患者発生は9月4日から約2週間に及び, 同町住民680名であった. 保育園児から老人まで全年齢群に患者は認められたが, 小中学生 (48.5%) が有意に多かった. 主な臨床症状は, 下痢 (70.9%), 腹痛 (51.2%), 発熱 (44.6%) および頭痛 (27.9%) であり, 嘔気および嘔吐 (11.6%) は少なかった. 患者および町営水道の源水からSalmmella Enteritidisを検出し, 患者の発生状況等から推測して当該菌を本事例の原因菌と断定したが, 汚染源は不明であった. 初発患者が認められた前日は同地方に相当量の降雨があり, 濁水が配水池へ流入し, このことが本事例の誘因になったと推測された. 分離したS. Enteritidis21菌株は, リシン脱炭酸陰性, ファージ型8型, 2.7kbのプラスミドを保有および薬剤感受性であった. これらの性状は1989年に全国的に多発したS. Enteritidis食中毒分離株とは相違していた. 本事例は我が国において発生した飲料水に起因するサルモネラ食中毒の中では, 最大規模と思われた.

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