1994 年 68 巻 11 号 p. 1293-1305
欧米ではハイリスク者 (老齢者を含む) に対するインフルエンザ予防接種を積極的に推進する方向にあるが, 我が国では予防接種への対応は消極的であり, 効果そのものを否定する見解もある. そこで, ワクチン有効性の評価を中心に疫学研究手法を考察した.
1. インフルエンザ流行は時間と場所によって異なるので, 地域が異なる多施設の調査結果をプールして解析する時には注意を要する.
2. 対象集団中で観察した急性呼吸器疾患の集団発生が, インフルエンザウイルスによるものかどうかを, まず議論せねぼならない.
3. 接種・非接種の群間で差を検出できない最大の理由に, 非インフルエンザによる結果の希釈があげられる. 罹患調査に当たっては, (1) 観察期間を最流行期間に限定する, (2) strictcriteriaを適用する, (3) 流行規模が比較的大きなシーズンに実施する, の3項目が重要である.
4. 自然感染により既に十分な抗体価を有する者の影響を考慮するためには, antibody efficacyを求める方法がある.
今後は, インフルエンザと関連する個人の特性を明らかにして, バイアスや交絡などについても検討を深める必要がある.