感染症学雑誌
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Nutritionally variant streptococciによる感染性心内膜炎の細菌学的および臨床的検討
菊池 賢戸塚 恭一清水 喜八郎江成 唯子柴田 雄介長谷川 裕美
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1994 年 68 巻 7 号 p. 830-836

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抄録

我々は1981年より1991年までに発症したnutritionally variant streptococci (NVS) による感染性心内膜炎の4例を報告する.この女性3例と男性1例はいずれも基礎に心疾患を有していた.検出された菌はブドウ球菌に衛星現象を示し, DNA-DNA hybridizationによりこのうち2株がS.adjacens, 残りの2株がS.defectivusと同定された.全てはbenzylpenicillin tolerant株であり, 1株はpenicillin耐性 (MIC: 4μg/ml) を示した.このpenicillin耐性株はgentamicinにもtoleranceを示した.また, この株に対してはin vitro殺菌曲線によるbenzylpenicillinとgentamicinの相乗作用もみられなかった.この株による感染性心内膜炎の11歳女性例は大血管転位症を有し, Rastelli手術による心外導管に大きな疵贅を持っていた.この症例には多くの抗菌剤治療が不成功で, 心外導管交換と三尖弁形成術を余儀なくされた.NVSによる感染性心内膜炎は決してわが国でも稀な疾患ではないため, NVSは培養陰性心内膜炎の起因菌として考慮すべきである.

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