感染症学雑誌
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高齢者におけるB群β溶血性連鎖球菌分離に関する検討
松浦 徹足立 暁鈴木 幹三山腰 雅宏山本 俊信山本 俊幸有我 憲仁小田原 史知
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1996 年 70 巻 2 号 p. 161-167

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抄録

高齢者を対象とする名古屋市厚生院における臨床材料よりのB群β 溶血性連鎖球菌 (以下GBS) の分離の動向, GBS分離例の臨床的背景および血中型別抗体価測定の高齢者における意義について検討を加えた.
疾および尿より1988年以降β 溶血性連鎖球菌が分離され, そのうちB群は疾分離菌の70-80%を占め最も多く, G群, C群もわずかに分離されたが, A群は1株も分離されなかった.感染症状を伴う臨床例, 経気管吸引 (transtracheal aspiration, TTA) よりの分離およびGBSに対する血中抗体価の上昇よりGBSは高齢者感染症の起炎菌としての可能性が示唆された.GBSの型別では, Ia型, Ib型およびJM9型が多かった.分離症例の臨床的背景を調査したところ, 臥床症例が多く, 特に, 経鼻胃管栄養や気管切開を施行している易感染性宿主に多い点が注目され, 院内感染の面からもその予防対策が望まれた.また, 血中型別抗体価を測定した結果より, 名古屋市厚生院において分離頻度の高いIa型, Ib型, JM9型の抗体価の著しく高い例がみられ, 高齢者においてもその測定の有用性が示唆された.

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© 日本感染症学会
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