感染症学雑誌
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広島県において見いだされたツツガムシ病多数例の臨床的および疫学的解析
岩崎 博道矢野 貴彦金子 栄江木 素子高田 伸弘上田 孝典
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2001 年 75 巻 5 号 p. 365-370

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抄録

広島県西部において, 1990年からの10年間に63例のツツガムシ病が発生し, 多くは太田川中流域に集中していたが (55例, 87.3%), うち30例 (47.6%) は広島市安佐北区にみられた. 臨床像では, 3主徴として, 刺し口 (84.6%), 発疹 (97.6%), およびリンパ節腫脹 (88.9%) をみた.また, 38.1%が肝機能障害を合併し, 末梢血塗抹標本を検討できた例では, 90.9%に異型リンパ球が確認された. 発症時期の明らかな全61例において, 902% (55例) が, 9~12月の発症であった. 一方, 太田川中流域におけるツツガムシの採集で, タテツツガムシの生息が確認できた. また, 安佐北区に発症した1例においては, 同ツツガムシ親和性のKawasaki型優位の抗体価の上昇を確認した.以上から, 広島県におけるツツガムシ病の臨床像は, 従来の報告と比較して, 大きな相違はみなかったが, この地域でのツツガムシ病はタテツツガムシ媒介性であることが強く示唆された.

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