感染症学雑誌
Online ISSN : 1884-569X
Print ISSN : 0387-5911
ISSN-L : 0387-5911
京都市におけるノロウイルス集団感染事例の検討2006/07シーズン
北川 信一郎臼井 忠男石川 和弘松井 祐佐公
著者情報
ジャーナル フリー

2008 年 82 巻 5 号 p. 434-440

詳細
抄録

平成18年度に, 京都市内で発生した感染性胃腸炎の集団感染事例 (食中毒を除く) で, 保健所が調査・指導を実施した96件 (有症者6, 483人) の記述疫学調査と, 衛生公害研究所における分子疫学調査を合わせて検討を行った. 高齢者福祉施設56, 病院31, その他9件で, 有症者の25.9%が職員, 74.1%が施設利用者で, 高齢者福祉施設3カ所で集団感染が再発していた.「発生~ 終息」の期間のうち最も頻度が高いのは約20日であり, また, 「発生~ 指導」の期間との問に正の相関がみられた. 利用者側の問題点は認知症に伴うものが多く, 施設側では不適。切な処置, 面会者の健康状況未把握等があげられた.検体のうち74サンプルを解析したところ, すべてがGII/4で, さらに, 同一年度内に再度発症した高齢者福祉施設における代表サンプル2株を遺伝子解析したところ, 共に全国で流行したヨーロッパ2006b変異株と同じクラスターに含まれていた. 職員が初発であることも多く, 一度発生すると終息までに最長で67日もかかったこと, 吐物からの検出率が高く取り扱いには注意が必要であったことから, 流行時期以前に, 感染対策に関する知識の普及啓発が重要であることが再確認された. また, 「発生~指導」と「発生~終息」の期間の問に正の相関がみられたことから, 早期に速やかな介入が大切であり, さらには同シーズン中の再発者もいたことから, 今後, 高齢者の免疫の持続期間ならびに遺伝子の変異等についての追跡調査と多数の症例の解析が必要である.

著者関連情報
© 日本感染症学会
前の記事 次の記事
feedback
Top