肝臓
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症例報告
全身性炎症反応症候群を合併した非代償性アルコール性肝硬変の1例
大塚 敏之萩原 聡戸島 洋貴長坂 一三富岡 眞一高木 均森 昌朋
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2005 年 46 巻 12 号 p. 710-715

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抄録

症例は44歳男性. 18歳から日本酒換算で1日平均3合, 27年間の飲酒をしていた. 2004年12月より飲酒量が増え, 2005年1月腹部膨満感と浮腫が出現したため当院受診し入院となった. 発熱持続していたが感染源は不明であり, 各種抗生剤の投与を行ったが効果なかった. 浮腫・胸腹水に対して利尿剤の投与や腹水穿刺排液を行ったが治療効果は乏しかった. 38℃を超える発熱と90回/分を超える脈拍が持続していたことから, 代償期のアルコール性肝硬変の経過中にアルコール多飲によるアルコール性肝炎が加わり, 全身性炎症反応症候群を発症したと診断した. 血清interleukin-6が高値であったことから, 抗生剤と利尿剤に加えてメシル酸ナファモスタットの投与を開始した. その結果, 発熱, 頻脈及び浮腫・胸腹水が改善した. 本例はアルコール性肝障害におけるサイトカインの役割を解明する上で示唆に富む症例と考えられた.

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© 2005 一般社団法人 日本肝臓学会
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