肝臓
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小児肝疾患 : 成人へのcarry-over
1. 小児ウイルス肝炎のキャリーオーバー
―B型肝炎, C型肝炎を中心として―
白木 和夫
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2006 年 47 巻 2 号 p. 71-77

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抄録

これまでのわが国の成人のB型肝炎ウイルスによる慢性肝障害, 肝がんは, 乳幼児期に感染したものがキャリーオーバーした結果であり, 近年はそのほとんどが母子垂直感染による. 母子感染でキャリアとなった小児の75%は成人に達する前に, 臨床的にほとんど診断されることなく慢性肝炎を経過してHBe抗原からHBe抗体へとseroconversionし, HBe抗体陽性B型肝炎ウイルスキャリアとなる. 残りの25%は小児期には肝障害を起こすことなく, そのまま成人のHBe抗原陽性B型肝炎ウイルスキャリアにキャリーオーバーし, これから成人の慢性肝炎, 肝硬変, 肝がんが発症するものと考えられる.
これまでのC型肝炎ウイルス持続感染小児の大部分は輸血によると考えられるもので, 母子感染によるものはそれほど多くなかったが, 今後はこの経路が残されている. HCV RNA陽性妊婦から生まれた児の約10%がHCV RNA持続陽性となるが, 3歳までに30%でHCV RNAが消失する. 最終的に何%が成人までキャリーオーバーするかを明らかにするには今後さらなる追跡調査を要する. 小児の輸血後慢性C型肝炎の予後に関しては, 悪性新生物の場合, 肝組織像で線維化が進んだ症例が多いとする報告があるが, 長期的予後に関してはまだ不明である.

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© 2006 一般社団法人 日本肝臓学会
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