肝臓
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症例報告
肝性胸水発症後に多発性の肝偽小葉壊死を来した肝硬変の1剖検例
道免 和文稲富 裕佑田中 博文春野 政虎藤原 弘明大野 純清島 保和田 裕子下田 慎治坂井 英隆
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2013 年 54 巻 4 号 p. 277-283

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抄録

症例は91歳の女性.約10年前より非アルコール性脂肪肝より進展した肝硬変と診断され,近医で加療されていた.腹水の管理目的にて当科に紹介入院となった.血清アルブミンは3.0 g/dlと低値で,画像上,多量の腹水を伴った肝硬変所見を認めた.ALTは9 IU/lと低値であった.利尿剤投与,腹水穿刺排液による治療を行なったが,入院第36病日に呼吸困難の出現ならびに酸素分圧の低下を来たした.胸部X線にて多量の右胸水を認め,肝性胸水と診断された.肝性胸水発症9日目の血液検査でASTが439 IU/l,ALTが1196 IU/lと著明な上昇を呈し,超音波検査ならびに断層撮影では肝内に多発性の低輝度,低濃度結節,門脈血栓を認めた.肝性胸水発症19日目に肝不全・呼吸不全で死亡した.剖検では肝硬変,門脈血栓,右無気肺,右胸水,腹水を認めた.肝偽小葉は散在性に壊死に陥っており,超音波検査,断層撮影で示された肝の多発性低輝度,低濃度結節に一致した.肝偽小葉壊死は肝性胸水に伴う低酸素血症による肝虚血,門脈血栓を原因とした門脈流低下による肝虚血という両者の複合が原因と考えられた.

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© 2013 一般社団法人 日本肝臓学会
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