2014 年 55 巻 11 号 p. 670-676
63歳男性.前立腺肥大症に対して選択的α1a遮断薬(Silodosin 8 mg)及び漢方薬(ツムラ八味地黄丸®7.5 g)を前医から処方され服用していた.服用開始14日後より褐色尿を自覚し,同27日後の血液検査にてT.Bil 10.6 mg/dl,AST 2,707 IU/L,ALT 3,035 IU/Lと肝障害を認め,当院へ紹介され入院となった.肝炎ウィルス,自己免疫疾患関連マーカーは陰性,過度の飲酒歴はなく,薬物性肝障害を疑った.入院後I度肝性脳症出現し,プロトロンビン時間は40%以下に低下,トランスアミナーゼも遷延・増悪したため,重症急性肝炎と診断し,プレドニゾロン40 mg/日を開始した.その後肝障害は軽快し,プレドニゾロンを漸減し中止した.薬物リンパ球刺激試験ではSilodosinが陽性,薬物性肝障害のスコアリングで肝細胞障害型の8点であり薬物性肝障害と診断した.Silodosinによる薬物性肝障害の稀な1例を報告した.