2015 年 56 巻 12 号 p. 668-674
85歳男性,非アルコール性脂肪肝炎(NASH)を背景とした肝硬変と慢性腎不全加療中に肝性脳症の内服コントロールが不良となった.胸腹部CTで門脈から傍食道静脈を経由して大静脈へ流入する門脈-大循環短絡路(Shunt)を認め繰り返す肝性脳症の原因と考えられた.経皮経肝的門脈アプローチを選択し希釈した造影剤を用いてコイリングを施行した.術直後の門脈圧は上昇しなかったが第8病日に右胸水と呼吸苦を認めた.利尿剤を増量し右胸水は消失,一方で利尿剤増量による腎臓・アンモニア(NH3)への影響は無く,その後も腎機能悪化や肝性脳症再発を認めなかった.本例は慢性腎不全合併超高齢者に対して,造影剤や利尿剤による腎臓への障害を最小限にして経皮経肝的門脈側副血行路塞栓術(Percutaneous Transhepatic Obliteration;PTO)を行うことで肝性脳症をコントロールすることが可能であった.