2015 年 56 巻 2 号 p. 65-72
症例は67歳男性.海外渡航後,肝機能異常を認め当科入院となった.IgM型HA抗体陽性よりA型重症急性肝炎と診断した.保存的治療によりAST, ALTは改善傾向を示したが黄疸が持続し,第32病日より急速な貧血の進行を認めた.出血の所見はなく,網状赤血球は著明に低下していたが,骨髄は明らかな異常を認めなかった.また,T-bil, LDHの再上昇,haptoglobinの著明な低下が見られたことより,溶血性貧血と診断した.輸血のみで貧血は改善しステロイドの投与は行わなかった.また,第37病日頃より発熱が出現.サイトメガロウィルス(cytomegalovirus:CMV)抗原陽性であったためganciclovir投与開始しCMV抗原は陰性化した.入院時IgG型CMV抗体陽性であったことから,本症例はA型重症急性肝炎に溶血性貧血とCMVの再活性化を伴ったと考えられた.