2015 年 56 巻 6 号 p. 296-302
症例は43歳,女性.26歳時にHCV抗体陽性を指摘され,41歳時にC型肝硬変と診断される.2013年5月に肝機能増悪(Child-Pugh score:12点)を認めたため,同年8月に生体肝移植目的で当科入院となった.入院4日前からの歯肉出血の訴えがあり,入院時血小板数2000/μLと著明な減少を認めた.種々の検査にて骨髄内の巨核球数増加,血小板関連IgG(PAIgG)高値を認めたため,C型肝硬変に合併した特発性血小板減少性紫斑病(ITP)の診断となった.免疫グロブリン大量療法及びRituximab点滴を施行したところ血小板数は75000/μLへと速やかに改善.予定通り治療開始9日後,生体肝移植及び脾摘術が施行され術後血小板数は20万/μLと良好に経過し現在観察中である.本邦では,生体肝移植前に急性発症したHCV感染合併ITP症例については報告例がなく,文献的考察を含めて報告する.