肝臓
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症例報告
猪胆(乾燥猪胆囊)からの感染が疑われた急性E型肝炎の1例
宮崎 慎一野田 裕之森田 照美甲斐 弦大廻 あゆみ小林 富成長嶋 茂雄高橋 雅春水尾 仁志岡本 宏明
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キーワード: E型肝炎, , 胆囊, 3a型HEV, 超高齢者
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2016 年 57 巻 11 号 p. 606-613

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抄録

鳥取県の山間部に居住する92歳の一人暮らしの男性が急性E型肝炎を発症した.患者には海外渡航歴や輸血歴はなく,発症前3カ月以内の豚レバーやホルモン,猪や鹿などの動物の肉や内臓の喫食歴,魚介類の生食の既往も無かった.しかし,7~8年前から猪胆(乾燥した猪の胆囊)を猟師より入手し,胆囊粉末を冷水に溶き,その胆汁液を生薬として飲用していたことが判明した.飲み残しの胆汁液はなかったが,保管されていた猪胆18個中7個からHEV RNAが検出され,患者から分離された3a型HEVと塩基配列が99.8%一致するHEVが同定された.加えて,リン酸緩衝液で溶出した10%胆汁液のHEV RNAタイターが4.6×105 copies/mlに達するものもあり,猪胆からの感染が強く疑われた.猪の肉やレバーの喫食後のE型肝炎症例はこれまでに多く報告されているが,猪胆が感染源と考えられる症例の報告は今回が初めてである.

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© 2016 一般社団法人 日本肝臓学会
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