2017 年 58 巻 1 号 p. 28-37
症例1は60歳代男性.2014年2月に門脈腫瘍栓(Vp3)を伴う最大70 mm大の多発肝細胞癌(HCC)に対してDrug-eluting beads transcatheter arterial chemoembolization(以下DEB-TACE)を施行し,術後に腫瘍栓に対して放射線治療を施行した.その後再発に対して2回のDEB-TACEを行い,最終治療から6カ月間CRが継続している.症例2は80歳代男性,2012年に多発肝細胞癌を指摘され,他院でTACEを合計3回施行したが,門脈腫瘍栓(Vp3)を伴う再発あり当院に紹介された.門脈腫瘍栓部位に放射線療法とシスプラチンを用いたTACEを施行したが再発あり,エピルビシンを用いたDEB-TACEを追加施行した.DEB-TACE後に16カ月間CRが継続している.DEB-TACEが門脈腫瘍栓(Vp3)を伴う肝細胞癌に対する有効な治療法である可能性を示唆する2症例を経験したので報告する.