症例は,71歳男性.C型慢性肝炎のウイルス学的著効(SVR)後10年後の経過観察中,肝癌のスクリーニング目的に施行したMRIにて肝S8に8 mm大の多血性結節を認めた.血液検査では好酸球,IgEが上昇しており,肝腫瘍生検にて好酸球浸潤を認め,血清イヌ回虫抗体価が高値でありトキソカラ症と診断した.その後結節は一度消失したが,当初と異なる部位に新規病変を認め,再燃と考えアルベンタゾールにて加療した.画像診断にて病変は消失し,好酸球,IgE,血清抗体価の低下を認め16カ月後現在再燃は認めず,治癒したものと考えられた.肝トキソカラ症は,画像診断のみでは肝癌との鑑別が困難である.消退する経過や問診,血液検査所見から鑑別に挙げるべき疾患と考えられた.