2017 年 58 巻 6 号 p. 344-350
症例は83歳男性.2008年頃よりC型慢性肝炎,高血圧などで近医通院加療されていた.2013年に肝癌初発を認め,その後3回肝動脈化学塞栓療法(TACE)を施行した.2016年に4回目のTACE目的に入院し,微粉末(化)シスプラチン(CDDP)によるTACEを施行した.TACE翌日に急激な肝・腎機能障害,凝固能増悪,貧血,血小板減少を認めた.播種性血管内凝固症候群(DIC)の診断でナファモスタットメシル酸塩・メチルプレドニゾロン投与,赤血球・血小板輸血を行ったが,データ増悪傾向変わらず,末梢血塗抹標本で破砕赤血球を認め,所見から二次性TMA(血栓性微小血管症)とDICの合併例と診断した.血漿交換を開始したところ肝機能障害は著明に改善し,貧血・血小板減少・腎機能障害も改善傾向となった.血漿交換を合計9回施行し,貧血・血小板減少の安定を認めた.本症例はCDDPによる二次性TMAが疑われたが,CDDPによる二次性TMAのTACEでの報告は稀なため,若干の文献的考察を加えて報告する.