症例は70歳女性.食後の上腹部痛を主訴に受診し,入院精査を行い膵頭部癌と診断された.造影CTにて門脈左枝水平部は欠如し,肝左葉の門脈枝は中肝静脈の腹側をアーチ状に横走する肝内門脈枝を介して描出されており,門脈左右分岐部の欠如と診断した.内視鏡的胆管造影では左右肝管が長く,左肝管はB2+3および3本のB4がほぼ同じ位置で合流して形成されていた.左肝管に最も右側より合流するB4は肝右縁付近まで描出されており,一部の枝が中肝静脈の腹側をアーチ状に横走する肝内門脈枝と併走していた.肝内門脈枝は,門脈左枝水平部が形成されなかったことに対して,P8とP4の門脈枝の間で形成された肝内門脈吻合枝であると考えられた.門脈左右分岐部の欠如を有する症例では胆管の分岐異常を伴うことが考えられ,術前には詳細な胆管評価が必要である.