肝臓
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症例報告
高度の炎症反応を伴い診断に苦慮した肝未分化癌の一例
堀本 啓大藤田 弘之宮下 憲暢三和 公明小西 和哉平野 聡高桑 康成岡本 宗則
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2018 年 59 巻 1 号 p. 56-64

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抄録

症例は80歳代女性.食思不振と炎症反応高値が持続し,径8 cm大の肝腫瘤を指摘されたため当科紹介となった.一部肝外に突出し,動脈相から平衡相にかけて腫瘍辺縁の淡い造影効果を伴う乏血性の腫瘤で,生検でも悪性所見は得られなかった.炎症反応高値と併せて,肝放線菌症などによる慢性肝膿瘍を疑い抗生剤加療を開始した.炎症反応が遷延し腫瘤が増大傾向を示したため,再度生検を施行したところ肝肉腫の診断となり,肝後区域切除,横隔膜合併切除が施行された.異型核を持つ腫瘍細胞がシート状に増殖しており,Vimentin(+),AE1/AE3(+)にてUndifferentiated carcinoma(Sarcomatoid carcinoma)と最終診断された.肝未分化癌の報告は稀であり,しばしば弛張熱や炎症反応を伴い肝膿瘍と鑑別が困難な症例が散見される.本例でも同様の経過を辿り診断に苦慮したため報告する.

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© 2018 一般社団法人 日本肝臓学会
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