2018 年 59 巻 4 号 p. 217-223
症例は40歳,男性.慢性腎不全による腎移植後のため,近医で通院加療を受けていた.高アンモニア血症と意識消失発作を認め,同院のCT検査で腹部血行異常を疑われたため精査目的に紹介となった.超音波では,門脈から下大静脈へ連続する管腔構造が認められ,門脈側から下大静脈へ向かう血流が観察されたことから静脈管開存が疑われた.血管造影検査では下大静脈から短絡路部へバルンカテーテルが挿入され,静脈管開存の存在が確認された.バルンカテーテルによる短絡路の閉塞試験では,門脈ならびに脾静脈血流は停滞し肝内門脈血流も観察されなかった.以上より,先天性門脈欠損症I型と診断され,外科的な短絡路結紮切離による改善は期待できないと考えられた.なお肝生検組織から,原発性胆汁性胆管炎(Scheuer分類Stage 2,中沼分類Stage 3)と診断された.今後,肝移植の適応を含めた診療の展開が求められる.