2020 年 61 巻 11 号 p. 582-587
症例は68歳,男性.心筋梗塞後通院中に傾眠傾向を認め,高アンモニア血症及び頭部MRI所見から肝性脳症による意識障害と診断され精査目的に当院紹介となった.アンモニア高値(176 μg/dL)を認めたが,背景肝疾患や代謝性疾患を認めなかった.腹部エコーにて左門脈分枝の拡張を認め門脈肝静脈シャントを疑い,造影CTにて肝内シャントのみであったため経皮的門脈造影を予定した.門脈造影で,門脈左枝の瘤化したシャントを認め,金属コイルを用い経皮経肝塞栓術(percutaneous transhepatic obliteration;PTO)を施行した.治療後,アンモニアは直ちに正常値化(42 μg/dL)し,ラクチトール水和物を中止後もアンモニアの上昇を認めなかった.肝臓に基礎疾患を認めず急性発症した肝性脳症に対して肝内門脈肝静脈シャントと診断しPTOが奏効した症例を経験したので報告する.