2021 年 62 巻 7 号 p. 413-419
症例は68歳男性,2014年に交通外傷のため手術を含む集学的治療を受けた.2018年の健康診断において血清γ-GTP高値を指摘された.前医で施行された腹部CT検査で中肝静脈閉塞が疑われたため当科を紹介され2019年5月に入院した.腹部CT検査では右横隔膜ヘルニアを認め,ヘルニア門により中肝静脈が閉塞し還流領域の肝実質が高度に萎縮していた.右肝静脈にも軽度の圧排が疑われた.過去の画像を検討し,受傷直後にも認めていた軽微な横隔膜ヘルニアが経時的に増悪し,脱出する肝の容積が増えるに従って中肝静脈閉塞が生じたものと診断した.外傷性横隔膜ヘルニアに続発した肝静脈閉塞の症例はこれまでに報告がなく,胸腹部外傷後の経過観察を行う上で示唆に富む症例と考え報告する.