肝臓
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肝胆道疾患における胆汁酸代謝
肝胆道疾患における尿中胆汁酸SulfateおよびNonsulfateについて
篠崎 堅次郎牧野 勲中川 昌一真下 啓明
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1973 年 14 巻 1 号 p. 23-28

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抄録

正常人および肝疾患患者尿中からAmberlite XAD-2 resinを使用して胆汁酸を抽出し,抽出胆汁酸をSephadex LH-20 columnで分画したところ,従来人間においてはまったく報告のない胆汁酸sulfateが存在することを証明した.
急性肝炎の患者尿中から抽出分離された胆汁酸sulfateを薄層クロマトで同定を試みた結果,胆汁酸sulfateはtaurineおよびglycine抱合酸,それに非抱合酸とも異なるRf値を示すspotとして認められ,solvolysisを行つたのちの胆汁酸sulfateはglycodihydroxycholanoic acidと同じRfをもつspotとして検出された.以上の結果から,急性肝炎の患者尿中にglycodihydroxycholanoic acidのsulfateが存在することを証明し,かかる胆汁酸sulfateはnonsulfateよりもよりpolarな性格を有することが判明した.
正常人尿中にもごく微量であるが1日0.4mg以下の胆汁酸が排泄され,その50%以上がsulfateとして存在していた.肝疾患患者の場合,大量の胆汁酸尿中排泄が認められ,1日総排泄量は症例によって異なるが0.28から60.44mgldayに及んで,そのうち胆汁酸が総胆汁酸の35.5%から100%を占めていた.胆汁酸sulfateを構成する胆汁酸は大部分がchenodeoxycholic acidであり,一部はdeoxycholicacidとcholicacidであった.しかし従来の胆汁酸に関する研究ではsolvolysisが行われていないために,本論文で測定された予想外に大量の胆汁酸sulfateはまったく測定されていなかった.

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© 社団法人 日本肝臓学会
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