肝臓
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肝胆道疾患における胆汁酸代謝
肝胆道疾患における血中胆汁酸SulfateおよびNonsulfateについて
牧野 勲篠崎 堅次郎中川 昌一真下 啓明
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1973 年 14 巻 1 号 p. 29-35

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抄録

Amberlite XAD-2 resinを使用して血中胆汁酸を抽出し,抽出胆汁酸をSephadex LH-20 columnで分画したところ,従来人間において報告のない胆汁酸sulfateが血中に存在することを証明した.かかるsulfateは従来の血中胆汁酸に関する研究では,solvolysisが行われていないために,まったく測定されていない.
正常人の血中総胆汁酸は0.69±0.30μg/mlであり,ごく微量の胆汁酸sulfateが認められ,sulfate/総胆汁酸比は約9%で,sulfateはdihydroxycholanoic acidから構成されていた.
肝疾患患者において血中胆汁酸sulfateおよびnonsulfateはともに増加していたが,この両者の間に平行関係は認められなかった.胆汁酸sulfateの著明な増加は閉塞性黄疸(4.11±3.51μg/ml),胆汁性肝硬変症(4.99±4.93μg/ml),転移性肝癌(2.26±0.27μg/ml)で出現し,軽度の上昇は慢性肝炎(0.90±1.50μg/ml),肝硬変症(0.54±0.41μg/ml)でみられた.増加した胆汁酸はdihydroxycholanoic acidからなり,血中胆汁酸sulfate/総胆汁酸比は0~82%の間を変動した.一方,胆汁中に胆汁酸sulfateはほとんど存在していない.
同一日に採取された尿と血清試料の各胆汁酸sulfateとnonsulfate濃度が測定され,それによってchenodeoxycholic acid sulfateの腎におけるクリアランスが計算された結果,chenodeoxycholic acid sulfateはnonsulfateより数倍から数百倍クリアランスが高いことが推察され,肝疾患時血中に異常に増加した胆汁酸,とくにdihydroxycholanoic acidは尿中にsulfateとして排泄されると考えられた.

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© 社団法人 日本肝臓学会
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