14 巻 (1973) 11 号 p. 657-665
Oxyphenisatin acetate (Bisatin)起因性ルポイド肝炎の2症例につき,免疫学的検索成績を主として報告した.
第I例(58才,女)では「chronic active hepatitis with pericholangitis」の組織像を呈し,Bisatinによる誘発試験陽性であった.第II例(64才,男)では「activecirrhosis」の組織所見を呈し,Bisatinに対する細胞性抗体は陽性であった.両例ともLE細胞現象を始め多種類の血中自己抗体の出現をみたが,大多数の真のルポイド肝炎とは異なり細胞性自己抗体は検出されず,血中補体値の低下もみられなかつた.第I例の家族検診では家系内に免疫異常を示すものが発見され,第II例の患者では少量のM成分が検出された.血清LDHはすべてこのM成分と複合体を形成し(macroLDH),ザイモグラムでは第IV分画のみ存在した.
本症はBisatinにより惹起された肝を場とするhypersensitivity responseであるが,Bisatinの連用がおそらくはその薬理学的特性と相俟って抗体産生臓器の異常を招来し,病像を多彩ならしめているものと解される.抗体産生臓器の異常を来たした背景として,素因の問題も免疫遺伝学的に検討する必要が痛感された.真のルポイド肝炎との免疫学的異同についても考察を加えた結果,本症は正しくはBisatin起因性ルポイド肝炎様反応と称されるべき病態であることを指摘した.