肝臓
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静脈系の異常を伴う多発性肝・腎嚢胞2例
神田 芳郎和田 豊治曽川 祖訓福山 悦男松村 康一武者 広隆森 博通隅越 利雄吉田 孝宣北方 勇輔前田 昌利
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1974 年 15 巻 7 号 p. 442-447

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抄録

多発性肝嚢胞は臨床的にまれな疾患である.最近経験した2症例について報告する.第1例は,黄疸,肝腫大があり,Al-p, GOT, GPT, LDHの上昇,肝スキャンにて欠損像があり,肝の悪性腫瘍とは腹腔鏡検査により鑑別された.また肝静脈像で,肝右葉内部にも嚢胞の存在を示し,嚢胞周囲に肝静脈の吻合が多数認められた.これは嚢胞に伴う先天的異常なのか,または嚢胞増大に伴う続発的な変化なのか現在不明である.なお肝右葉からの肝生検所見では慢性肝炎であった.また黄疸は約6週後に消失,肝機能も正常化した.
第2例は腹部に臍位にまで達する腫瘤があり,肝機能検査はAl-pの軽度上昇の他は異常なく,選択的腹腔動脈像の静脈相で,うすく多数の陰影欠損像があり,同時に腎動脈像の静脈相にも両側腎に多数の嚢胞を認めた.また右副腎静脈像にも異常が認められた.

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© 社団法人 日本肝臓学会
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