慢性肝炎及び肝硬変症における肝実質内鉄沈着の機序を解明する目的で,特に肝内因子に注目して,生検肝組織の構築法により肝細血管の追跡を行い,鉄沈着部の血液循環を検討した.実質内鉄沈着は肝小葉構造の歪みの進展につれ,規則正しいびまん性の分布から,不規則な局在性の分布に移行した.これらの鉄沈着部は構築法により,いずれも門脈終末枝周辺部に相当し,血液循環の良好な部位であった.また局在性鉄沈着を示す症例では,主として肝索の並びに関連した類洞の開き具合の程度,及び実質肥大の圧迫による肝細血管の狭小・扁平化,弯曲などの圧排像の程度により,血液循環の良好な部位と不良な部位が混在して出現し,そのうち特に血液循環のより良好な部位に特異的に鉄沈着が存在した.以上より鉄沈着の機序として,鉄含有量の豊富な血液がより豊かに注ぎ込む類洞の周辺部の肝細胞群に,鉄が沈着すると考えられ,良好な血液循環の重要性が推察された.