抄録
56歳男性で昭和47年胃潰瘍の治療の為入院中に,肝腫大,肝機能異常,肝シンチグラムにて異常が指摘され,A.F.P.がSD法で陽性のため腹腔動脈撮影を施行,肝右葉下縁に30×17mmの腫瘍が発見された.2年後に肝右葉下縁に腫瘤を触知し,肝シンチグラムでも肝右葉下端に欠損像を認めた.A.F.P.はRadioimunoassay法にて10,217ng/mlであり腹腔動脈撮影では肝右葉は腫瘍血管で占められ原発性肝癌と診断された.この時Seldingerのカテーテルより腹腔動脈内にMitomycin C 20mgをone shot注入し,さらに家族の希望により4日目より蓮見ワクチンを使用した所,腫瘍は縮小し,A.F.P.も低下し正常化した.1年10ヵ月後,食道静脈瘤の破綻にて死亡し剖検したところ,肝癌のあったと考えられる所は瘢痕組織に置き換えられ病理組織学的にも癌細胞は発見されず,原発性肝癌は治癒したと考えられた.症例を呈示し,原発性肝癌の治療に関し若干の文献学的考察を加えた.