1981 年 22 巻 1 号 p. 52-60
担癌肝における腫瘍占居率は肝細胞癌(肝癌)の予後を左右する大きな因子であるが,肝癌の臨床病期分類は,腫瘍占居率という解剖学的要素のみでなく機能面をも加味したものであることが必要と思われる.今回著者らはalbumin, bilirubin, GOT, GOT/GPT, ICG 15'および腹水の有無を指標とし,担癌肝の予備能にもとづいた新しい肝癌の臨床病期分類の作成を試みた.上記6項目を用いてscoring法をおこない,total scoreの大小によって病期を3つに分けたところ,total scoreの高いすなわち肝予備能の障害が高度なstage IIIの症例は予後不良であるのに対し,total scoreの低いすなわち肝予備能がいまだよく保たれたstage Iの症例のなかには長期間生存したものが少なくなかった.このことから肝癌の臨床病期分類を肝予備能にもとづいておこなうことは有意義と考えられた.また肝動脈内制癌剤one-shot療法はいずれのstageでも有用であり,なかでもstage Iの症例において,その延命効果は著明であった.