肝臓
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散発性A型肝炎に急性腎不全を併発した1症例
奥新 浩晃山田 剛太郎西原 隆水野 元夫坂本 裕治川口 憲二糸島 達也長島 秀夫遠藤 浩水野 保夫
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1981 年 22 巻 9 号 p. 1299-1305

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抄録

我々は最近,散発性A型急性肝炎に急性腎不全を併発し,しかも人工透析により救命し得た1症例を経験した.症例は38歳の男性で家族歴,既往歴に特記する事項はない.発熱,悪心,嘔吐で発症後黄疸が出現し,第12病日に肉眼的血尿,乏尿をきたした.第13病日にはBUN 168mg/dl, Creatinine 16.38mg/dlと急性腎不全を呈し,軽度の意識障害が認められた.第19病日と21病日に2回の人工透析を実施し,急速に腎不全の状態を脱すると共に意識障害も改善した.腎機能検査は透析後約1ヵ月で正常化した.本症例はIgM型HA抗体価の上昇よりA型急性肝炎と診断された.理学的所見と肝予備能の検査等から劇症肝炎は否定的であったが,GPT, GOTの回復は遷延化し,正常化にほぼ10ヵ月を要した.第89病日に腹腔鏡下肝生検を実施した.腹腔鏡では,島田の分類の206, 1を示し,また肝生検像では急性肝炎回復期を示した.腎生検は実施できなかったが,その病態についても若干の考察を行なった.

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© 社団法人 日本肝臓学会
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