肝臓
Online ISSN : 1881-3593
Print ISSN : 0451-4203
ISSN-L : 0451-4203
Radiation hepatitisの1例-実験的検討結果を含めた考察
関谷 千尋富永 吉春矢崎 康幸高橋 篤大原 和明並木 正義
著者情報
ジャーナル フリー

1981 年 22 巻 9 号 p. 1318-1325

詳細
抄録

症例は41歳の男性で,食道中部に約9cmに及ぶ全周性の狭窄があり,食道癌として60Coによる放射線治療を受けた.治療中上腹部前後に照射した4,000radsの照射量が肝左葉にかかった.照射治療後2週間ほどしてから,トランスアミナーゼ値の上昇がみられ,肝シンチグラムでも肝左葉全体の欠損像が確認された.腹腔鏡で肝表面をみると,右葉は表面平滑で,淡赤褐色を呈し,アルコールによると思われるわずかな肝線維化を認める程度であったが,肝左葉は萎縮して非常に硬くなっていた.しかもその色調は暗褐色であり,肝表面も凹凸不整であった.肝生検像では,強い肝細胞の変性壊死と小葉構造の著明な乱れが認められた.われわれは,犬の肝に500, 1,000, 2,000radsの放射線照射を行い,生じたRadiation hepatitisを経時的に腹腔鏡と肝生検にて観察し,検討を加えてみたので,その結果もあわせて報告した.

著者関連情報
© 社団法人 日本肝臓学会
前の記事 次の記事
feedback
Top