1982 年 23 巻 3 号 p. 317-324
ST (sulfamethoxazol trimethoprim)合剤内服後,約2週目に発熱,発疹,黄疸にて発症した薬剤起因性肝内胆汁うっ滞症に伴って,著明な低ガンマグロブリン血症を呈す症例を経験した.ことにIgAの低下が特徴的で,黄疸が消失して約1カ年経過した時点においても,その回復は不良である.同時に,ツ反応・PHA皮膚試験陰性など,細胞性免疫の低下を示唆する所見が,黄疸消失時まで持続した.
以上の病態は,続発性免疫不全と考えられるが,発現機序は不明である.免疫グロブリンの低下に関しては,その分化過程で,起因薬剤が何らかの障害を及ぼした結果と考えられるが,細胞性免疫の低下については,胆汁うっ滞との関連,ことに胆汁酸の影響が推測された.