肝臓
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劇症肝炎生存例の検討
与芝 真堺 隆弘三條 健昌井上 昇山崎 善弥藤原 研司岡田 吉博三代 俊治鳥居 正男高築 勝義林 茂樹太田 裕彦木村 洸岡 博織田 敏次田 達雄
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1982 年 23 巻 7 号 p. 715-721

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抄録

劇症肝炎の病態,特に重症度について知見を得る目的で,過去10年間に経験した劇症肝炎生存例12例の臨床的特長を,その間の死亡例25例のそれと比較検討した.
生存例は死亡例と比較して,年齢,性別,成因,昏睡度,プロトロンビン時間,総ビリルビン値,トランスアミナーゼ値に差は認められなかったが,発症から昏睡発現までの期間が短く,血中総アミノ酸量が低値を示した.また,血漿潅流,血漿交換施行例では,同程度の昏睡であっても,生存例は死亡例より治療後の昏睡の回復が速かであった.以上より,劇症肝炎の本質的重症度の把握には,昏睡度など従来からの指標だけでは不十分であり,血中総アミノ酸量などの指標を加え,より厳密に行うべきと考えられる.
昏睡回復後の肝組織像では,半数に慢性肝炎の像が見出され,今後,可及的にpair-biopsy, virus-markerの検索を行い,その成立機序を明らかにする必要が感じられた.

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© 社団法人 日本肝臓学会
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