23 巻 (1982) 7 号 p. 802-810
特に誘因と考えられる既往歴,職業歴,汚染,曝露歴を持たない50歳男性にみられた肝悪性血管内皮腫の1例を経験した.自覚症状に乏しく,血液生化学検査は正常範囲内であり,総合画像診断によりはじめて肝左葉の腫瘍と判明した.血管造影ではHypovascularな腫瘍であったが,腹腔鏡ならびに針生検により悪性血管内皮腫と診断した.腫瘍を含む肝左葉切除を施行し,切除肝は固く,割面では乳白色の充実性の腫瘍であった.電顕的観察では,腫瘍細胞は不規則にくびれ,クロマチンに富む核を有し,細胞質は小器官に乏しかった.細胞相互間の接合は密であるが,tight junctionは少なかった.基底膜の形成は多数認められたが,管腔と基底膜および腫瘍細胞との位置関係は複雑であり,一部に上皮細胞や間葉系細胞の存在も示唆され,全体的に未熟な腫瘍細胞群であった.本例は切除後良好な経過をたどり,1年後の現在再発の徴候は認めていない.