無月経を前駆症状として急性肝炎様の発病とそれに引続いて溶血発作がみられたウィルソン病の症例である.来院時赤血球232×104/mm3,ヘモグロビン7.9g/dl,血中アルブミン2.8g/dl,コリンエステラーゼ0.87×103IU/Lと低下がみられ,Kayser-Fleischer輪陽性であった.腹腔鏡下肝生検で肝硬変像が確認され肝内銅の異常沈着が確認された.LH-RH負荷試験で過剰反応がみられ,クロミフェン負荷試験でも基礎体温上昇なく月経出現もみられなかった.D-ペニシラミンの投与により尿中銅の異常な排泄増加に伴って貧血,肝機能の改善がみられD-ペニシラミン投与7ヵ月後には月経の再出現がみられるに至った.
以上の臨床経過より本症例にみられた溶血発作は肝細胞に蓄積した銅の血中逸脱による急激な血中銅の上昇がその一因と考えられ,体内銅の排出に伴って月経発現をみたことより視床下部への銅沈着による障害が疑われた.