1984 年 25 巻 10 号 p. 1227-1232
B型肝炎ワクチンの有効性試験中のチンパンジーに於いて,肝細胞微細構造の変化を電顕的に検索していた所,肝細胞小胞体内にフィラメント様構造物を2例で観察することができた.この構造物はHBs抗原の封入体であるフィラメント様構造物とは異なり,1982年Desmetらが非A非B型肝炎に特異的であると報告した構造物と同一であると思われた.しかし我々の場合,1例はワクチン接種にもかかわらず発症したB型肝炎であう,他方は肝炎発症を認めないチンパンジーであった.またこの2例とも,結核に羅患し全身衰弱の状態であった.更に長期間の抗結核療法を施行しており,薬物による影響も考慮しなければならず,必らずしも非A非B型肝炎に特異的であるとは思われなかった.