肝臓
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尿細管性アシドーシスを主症状とし,Sjögren症候群を合併した原発性胆汁性肝硬変症の1例
石井 善智林田 一洋石橋 大海長野 政則津田 泰夫草場 公宏大久保 英雄松尾 尚
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1985 年 26 巻 11 号 p. 1529-1534

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抄録

遠位及び近位尿細管性アシドーシス(dRTA & pRTA)とSjogren症候群(SjS)を合併した原発性胆汁性肝硬変症(PBC)の症例を報告する.症例は51歳女性,下肢脱力発作,躯幹筋肉痛などのRTAに基づく自覚症状が前景に現われ,SjSとPBCの症状は隠されていた.検査成績では,d & pRTAの所見,抗ミトコンドリア抗体(AMA)陽性,IgM著増(3300mg/dl)などがみられた.SjS, PBCの生検病理所見はともに初期像であった.PBCやSjSにRTAが合併した症例はみられるが,これら3者合併の報告は稀である.本症例においては,門脈域の胆管周囲,唾液腺周囲および腎の間質に単核細胞浸潤がみられたことから,これら3つの組織に共通な抗原を標的としてリンパ球が作用し,障害が生じた可能性が考えられた.RTAの発症は,小血管基底膜並びにその周辺へのIgMの沈着が関与しているものと考えられた.

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© 社団法人 日本肝臓学会
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