著者らは昭和58年と59年の2年間に,Budd-Chiari症候群の3例を経験した.内訳は3例とも中年男性であり,症例1と3では肝部下大静脈が膜様物により閉塞されていた.症例2は肥厚胸膜により下大静脈が右前方へ牽引され肝静脈血栓が生じた続発性Budd-Chiari症候群であった.診断にあたっては,原子核の磁気的性質を利用した画像装置NMR-CTを用い,他の診断法との比較検討を試みた.本法は特に下大静脈造影に比較して侵襲がなく,病変部位と側副血行路を三次光的に描出できるという利点があり,Budd-Chiaf症候群をはじめとする血管系疾患における,今後,有用な診断法となることが示唆された.