肝臓
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肝細胞癌とB型肝炎ウイルス
ウイルスDNA組込みの有無からみたその病理組織学的検討
青山 弘樋野 興夫北川 知行森 亘
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キーワード: 肝細胞癌, DNA組込み
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1985 年 26 巻 7 号 p. 838-845

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抄録

肝細胞癌(HCC)剖検20例について,B型肝炎ウイルス(HBV) DNAの宿主細胞DNAへの組込み状況,及びHCCの組織形態を観察し,HBV DNA組込みの有無という立場からHCCの病理組織像を検討した.HBV DNAの組込みをみたHCC 6例はいずれも索状型を示し,細胞質内球状硝子体の存在が比較的目立った.これに対し,HBV DNAの組込みのなかったHCC 14例では,大部分が索状型ながらそのほかに偽腺管型や充実型がみられた.基本的には,分化度や異型度,組織型など種々の点で,これら両群間に大きな差異を見出すことができなかったと言い得る.この所見は,HBV DNAの組込みが何らかの病理組織学的特徴を有するHCCを誘導するものではないことを示唆しており,HCC発生におけるHBV DNAの果たす役割を考察する上での重要な1資料と考えられる.そのほか,HBV DNAの組込みをみたHCCは全例肝硬変(LC)を合併していたのに対し,HBV DNAの組込みのないHCCには,LCの合併をみない例がごく僅かながら存在した.

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© 社団法人 日本肝臓学会
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