肝臓
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動脈塞栓術後DICを併発した肝細胞癌の1症例
大崎 往夫樋口 拓樋口 拓清水 達夫上田 恵佐々木 正道
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1985 年 26 巻 7 号 p. 934-939

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抄録

症例は53歳男性,肝硬変で通院中に血清AFP値の上昇を来たし入院,各種画像診断にて肝内転移を伴う肝細胞癌と診断し,動脈塞栓療法(TAE)を施行した.第4回TAE直後,全身の出血傾向とともにfibrinogenの著減,FDPの著増,Prothrombin timeなど凝固検査の増悪,凝固第8因子活性の低下をきたし,DICを併発したものと考えられた.治療によりDICからは脱却したが,術後12日目,横隔膜に浸潤した腫瘍が胸腔内に穿破し死亡した.TAEの重篤な合併症としては肝不全,腎不全,壊死性胆嚢炎などが報告されているが,DICを合併したとの報告はない.本例はTAEが引き金となりDICを起こしたもので,今後本療法施行に際しDICの合併にも留意する必要があるものと考えられる.

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© 社団法人 日本肝臓学会
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