肝臓
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肝疾患における門脈圧と門脈全身短絡との関係
中山 隆雅大西 久仁彦斉藤 正之寺林 秀隆飯田 真司野村 文夫高安 賢一奥田 邦雄
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1985 年 26 巻 8 号 p. 1049-1054

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抄録

各種肝疾患155例に経皮経肝門脈造影を施行し,門脈圧,側副血行路径を計測し,更に異なる核種で標識したmacroaggregated albumin (MAA)を用い,うち100例で門脈短絡率,50例で脾静脈短絡率,52例で総短絡率を測定した.その結果,1)総側副血行路径が増大すると,総短絡率も増加する.2)総側副血行路径は,門脈圧の上昇と共に増加して行くが,更に増加しているものでは,むしろ門脈圧は低い.3)門脈圧と総短絡率の間には,y=-0.070xx2+7.63x+180.91 (n=52, r=0.7494, p<0.001)の重相関が,4)門脈圧と脾静脈短絡率の間には,y=-0.065xx2+6.31x+241.27 (n=50, r=0.6269, p<0.001)の重相関が,5)門脈圧と門脈短絡率の間には,y=-0.047xx2+4.46x+252.59 (n=100, r=0.4037, p<0.001)の重相関が各々認められた.即ち慢性肝疾患では門脈圧の上昇に伴い総側副血行路径,各種短絡率の増加がみられるが,側副血行路を介す短絡が更に増加するとむしろ門脈圧は低下していた.言い換えると門脈系と全身循環との短絡(特に脾静脈を介するもの)は,門脈圧の緩衝作用を果していると考えられる.

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© 社団法人 日本肝臓学会
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