1986 年 27 巻 1 号 p. 81-87
原発性硬化性胆管炎の経過中に潰瘍性大腸炎が明らかになった症例を報告した.症例は35歳,女性,28歳時肝機能異常を指摘されたが診断がつかず経過観察していたところ,33歳時掻痒感,黄疸が出現した.トランスアミナーゼの軽度上昇と,胆道系酵素の高度上昇があり,ERCPで三管合流部より上流の硬化像,肝内胆管の狭窄,拡張等の所見が見られ,肝生検ではperiductal fibrosisが見られた.胆石はなく,手術歴もないことから原発性硬化性胆管炎と診断した.さらに35歳時1日4~5回の下痢,粘血便,食欲不振が出現した.注腸検査でハウストラの消失があり,全体的に淡いバリウム斑がみられ,下掘れ型の潰瘍もみられた.Colonfibers-copeでは直腸よりびまん性にびらんがみられ,所々に不整形の潰瘍がみられた.以上から潰瘍性大腸炎を伴う原発性硬化性胆管炎と診断した.自験例を含め,本邦報告例9例について若干文献的に考察した.