肝臓
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石灰化を伴う脾動脈瘤を合併した特発性門脈圧亢進症の1例
中村 武史森安 史典伴 信之西田 修上田 元彦三浦 賢佑酒井 正彦内野 治人三宅 健夫森 敬一郎熊田 馨小沢 和恵
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1986 年 27 巻 1 号 p. 88-92

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抄録

石灰化脾動脈瘤を伴う特発性門脈圧亢進症(IPH)の1例を報告した.症例は58歳の女性で汎血球減少の精査目的で入院した.腹部単純X線写真で左上腹部に円形石灰化陰影を認め,CT及びUSで脾腫,石灰化脾動脈瘤を疑った.腹腔動脈造影では,脾腫,拡張蛇行した脾動脈と脾門部の石灰化脾動脈瘤を見たが肝内動脈枝の変化は軽度であった.経皮経肝門脈造影では脾門部に著明な脾・腎シャントを見た.超音波ドップラー法で求めた血流量は,門脈1,301ml/min,シャント肝側の脾静脈710ml/min,上腸間膜静脈591ml/minで,門脈圧は24mmHgであった.脾動脈をバルーン閉塞負荷すると,脾静脈は456ml/minと逆流し,門脈圧は19mmHgと低下した.肝生検による肝の組織像は正常であった.本例の脾動脈瘤の原因はIPHにより亢進した脾血流が,脾・腎シャントという抵抗の小さい流出路により更に亢進した為と考えられた.

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© 社団法人 日本肝臓学会
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