ヒト胎盤よりglutathione S-transferase anionic form (GST-π)を精製した.最小分子量は,21,000で,等電点は4.5であった.抗GST-π特異抗血清を用いたOuchterlony法では,肝癌・腎などからのanionic GSTとは免疫学的に同じものであることがわかったが,肝から抽出したcationic GST (Ligandin)とは全く異なるものであった.肝細胞癌30例を用いた免疫組織学的検討では,癌部においては,50%の陽性率で,Edmondson I, II型の高分化型に陽性率が高かった.非癌部では,癌組織周囲のHE染色で正常と思われる細胞が比較的強く陽性に染色された.以上より,GST-πは,肝細胞癌の腫瘍マーカーとして有用性が示唆されるが,前癌性病変という意味で,非癌部における染色性の検討が今後必要と考える.