肝臓
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Cyt p 450-PBの精製および発癌過程における組織局在の変化
田邊 若子
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1986 年 27 巻 6 号 p. 810-815

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抄録

薬物代謝酵素cytochrome P 450のうち,フェノバルビタールによって酵素誘導されるcytochrome P 450(以下cyt P 450-PB)を,ラット肝ミクロゾームから精製し,これに対する抗体を家兎を用いて作製した.ラットに2-acetylaminofluoreneを投与してえた過形成性結節と肝癌について,cyt P 450-PBの局在を,先の抗体を用いて蛍光抗体間接法で検討したところ,過形成性結節には特異蛍光は認められず,肝細胞癌組織でもごく一部に染色された細胞を認めたものの,全般には非染色領域であった.Epoxide hydraseの局在についても,同様の方法で検討したところ,過形成性結節には強い蛍光を示したが,肝細胞癌では一部の細胞を除き蛍光は認められなかった.これらの薬物代謝酵素の相反する変化が,単に癌化によるフェノタイプの変化にもとづくのか,発癌剤という化学物質の代謝に関連したものか,癌化を解明する上で重要な課題であることが示唆された.

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© 社団法人 日本肝臓学会
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