肝臓
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劇症肝炎患者血清の胆汁分泌機構におよぼす影響
福本 陽平新開 泰司沖田 極竹本 忠良Robin D HughesChristopher D GoveRoger Williams
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キーワード: 胆汁分泌, 胆汁酸, 劇症肝炎
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1986 年 27 巻 8 号 p. 1076-1084

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抄録

劇症肝炎患者の血中に蓄積する中等大分子量の中毒性物質が,脳細胞膜のNa+, K+-ATPase活性や,白血球細胞のNa+の移動を阻害することが報告されている.一方,胆汁分泌機構における肝細胞膜Na+, K+-ATPaseの役割について,最近ではNa+と胆汁酸の共輸送という観点から,胆汁酸の肝での移送に関与していると推察されるようになった.そこで,本報では昏睡期の劇症肝炎患者血清より,細胞膜Na+, K+-ATPase活性を低下させる物質を抽出し,ラット門脈内に持続的に投与することによって,胆汁分泌に与える影響を検討した.その結果,ラットの胆汁分泌量は減少傾向を示し,胆汁中への胆汁酸の排泄は対照群に比べ有意に低下した.これらの事実は,肝細胞膜Na+, K+-ATPaseがむしろ胆汁中への胆汁酸の分泌に介在するという説を支持する結果となった.

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© 社団法人 日本肝臓学会
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